銃
強盗に襲われかけたことがある。
2人組が襲ってこようとしているのがショーウィンドウ越しに見えた。
とっさに受話器を持ち、右手で銃を構える。
「助けは間に合わない」
建物に侵入してきたら「撃ちなさい」と電話の女性が指示をする。自己防衛が成り立つらしい。
カタカタ…
震える爪が小刻みに冷たい銃の引き金に触れる
入口まで来た男がのぞき込む。
ドク…ドク…心臓の音だけが時計の針のように頭の中に鳴り響く
ピンと張り詰めた空気に緊張が走る。
ほんの数秒が数時間にも感じる孤独
入口に押し入ろうとしている帽子を深く被った男。
(来た)
覚悟を決めて人差し指に全神経を集中する
ドアを開けようとした男の鋭い目が私を捕らえる
今もあの時のことを忘れない。
銃を持つことには反対だった。
治安の良い街に住み、無縁な事だと思っていた。
いざと言う時の為にと言われ、渋々承諾したのが幸いだった。
綺麗事では守れない。
武士の刀と同じなのだ。
守るために持つ。
銃を見た男達は、慌てて逃げて行った。
極小の銃が……
私の命を守った瞬間だった。